長く使いたいから、丸型にしてるの。
お店でもよく言われました。
でも、実はそんなことないんですよ。
この記事では、元ストリンガー・元インターハイ選手の目線で、多角形ガットの寿命の考え方、使っているうちに起きる変化、そして張り替えのサインを解説します。
結論:多角形だから寿命が短い、とは言い切れない
- ガットの寿命には、「切れるまで」と「気持ちよく使えるまで」の2種類がある
- 一般プレーヤーのほとんどは、切れる前に性能の寿命が来る
- 使っているうちに、角の摩耗・表面の傷み・ノッチ(溝)で性能が変わる
- スピンが落ちる一番の原因は、角が丸くなることよりノッチ
- 丸型でもノッチはできる。多角形だから劣化が早いとは単純に言えない
- 縦糸がずれたまま戻らなくなったら、張り替えのサイン
「丸型しか使いたくない」お客さんの話
ストリンガーをしていたころ、お客さんによくこう言われました。
- 「多角形ガットは、丸型ガットより寿命が短いからなー」
- 「長く使いたいから、丸型しか使いたくないんだよー」
そのたびに私は、「実はそんなことないんですよー?」と答えていました。
あるお客さんは、ルキシロンのアルパワー(丸型)を「高いんだよなー」と言いながら使っていました。
なので、RPMブラストをおすすめしてみたこともあります。
でも、「長く使えなきゃ嫌だもん」と、聞いてもらえませんでしたね……。
実はアルパワーって、このあと説明する「性能の寿命」を早く感じやすいガットなんですけどね(笑)
……自分の営業力の無さの賜物ですよ(笑)
ガットの「寿命」は2種類ある
多角形ガットの寿命が短いかどうかは、何を寿命と考えるかで答えが変わると思っています。
| 寿命の種類 | 中身 |
|---|---|
| ① 物理的な寿命 | ガットが切れるまでの期間 |
| ② 性能的な寿命 | 打球感・反発・スピン性能などを気持ちよく保てる期間 |
①の「切れるまで」は、形だけでなく、ゲージ(太さ)、素材、テンションなど、いろいろな要素が絡みます。
ゲージと切れやすさの関係は、こちらの記事で解説しています。
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そして、一般プレーヤーの方のほとんどは、①より先に②を迎えると思っています。
つまり、「多角形=寿命が短い」は、ガット同士がこすれる部分など、ある要素では当てはまります。
でも、一概にそうとは言い切れないということですね。
多角形ガットは、使うとどう変わる?
多角形ガットは、張りたてと、何時間も打ったあとでは性能が変わります。
(多角形ガットに限った話ではありませんが……)
特に注目したいのは、次の3つです。
- 角が摩耗して丸くなる
- 表面が傷む
- ガット同士が交差する部分に溝(ノッチ)ができる
この変化で、張りたてのときに感じていた引っかかりやスピン性能、打球感が変わっていきます。
張りたてから劣化までの3段階
| 段階 | ガットの状態 |
|---|---|
| ① 張りたて・使い始め | 角や表面加工がきれい。製品本来の打球感や反発を得やすい。スナップバックも働きやすい |
| ② 使用が進んだ状態 | 表面に傷がつく。角や表面加工が摩耗する。交差部分に少しずつノッチができる。張力も少しずつ下がる |
| ③ さらに使い込んだ状態 | ノッチが深くなる。縦糸が横に動きにくくなる。スナップバックが働かなくなる。打球感やコントロールが不安定になる |
具体的に変わる性能
| 項目 | 使い込むと起こりやすい変化 |
|---|---|
| 角の鋭さ | 摩耗で角が丸くなる場合がある |
| 表面 | こすれや傷、コーティングの劣化が起こる |
| スピン性能 | スナップバックが落ちると、回転をかけにくくなる |
| 打球感 | 張力の低下や素材の変形で、柔らかい・ぼやけた感覚になる |
| コントロール | 飛び方が安定せず、距離感を合わせにくくなる |
| ガットの動き | 縦糸が元の位置に戻りにくくなる |
スピンが落ちる原因は「角」より「ノッチ」
実は、ガット同士の交差部分にできるノッチや、摩擦が増えることで、縦糸が滑って戻る動き(スナップバック)がじゃまされることが大きいんです。
日本の研究者・川副嘉彦先生たちの研究では、使い込んでノッチができたナイロンのガットは、新品に比べてスピン量が平均40%も低下したという結果が出ています。
さらに、交差部分に潤滑剤を塗ると、スピン量が平均30%回復したそうです。
ただし、これは特定の条件で、ナイロンのガットを使った実験です。
多角形のポリすべてに、この数字がそのまま当てはまるわけではありません。
また、ポリは使っているうちに張力や弾力が変わり、スピン性能やコントロールが落ちていきます。
ストリンガーをしていて、これは本当によく感じていました。
多角形ガットならではの注意点
多角形ガットは、使うと角が摩耗する可能性があります。
でも、すべてのガットが均等に削れて、きれいな丸型に変わるわけではありません。
- 角の部分が削れる
- 面の部分にこすり傷がつく
- ガット同士の交差部分だけが深く摩耗する
- ガットがねじれたり、断面の向きが変わったりする
このように、摩耗の仕方はさまざまです。
そして、丸型のガットでも、もちろんノッチはできます。
つまり、「多角形だから劣化が早い」「丸型だから長持ちする」とは、単純には言えないんです。
張り替えのサイン:ストリンガー目線のチェックリスト
一般プレーヤーの方にも分かりやすいように、ストリンガー目線で張り替えのチェックポイントを作ってみました。
張り替え検討チェックリスト
- 打球感が張りたてと明らかに違う(ガットにハリがなくなった)
- ボールの飛び方が安定しなくなった
- スピンがかかりにくくなったと感じる
- 打ったあとに縦糸が元の位置に戻らなくなった
- ガットの交差部分に深い溝が見える
- ガットに目立つ傷や変形がある
特に分かりやすいのは、縦糸の動きです。
打ったあとに縦糸がずれたまま戻らず、手で直すことが増えてきたら、ガットの滑りやスナップバックが落ちているか、ガットが伸び切っている可能性があります。
この状態でテニスを続けると、余計な振動を腕が受けやすく、けがのリスクにもなるので注意してくださいね。
肘が心配な人は、こちらの記事も参考にしてください。
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まとめ
- ガットの寿命は「切れるまで」と「気持ちよく使えるまで」の2種類
- 一般プレーヤーのほとんどは、切れる前に性能の寿命が来る
- 使っているうちに、角の摩耗・表面の傷み・ノッチで性能が変わる
- スピンが落ちる大きな原因は、縦糸の動きをじゃまするノッチ
- 丸型でもノッチはできる。多角形だから劣化が早いとは言い切れない
- 縦糸を手で直すことが増えたら、張り替えを考えよう
「長く使いたいから丸型」と決めつけずに、ぜひ一度、多角形のガットも試してみてください。
あのときのお客さんにも、この記事を読んでもらいたいです(笑)
断面の形や表面加工の違い、形ごとの代表的なガットは、こちらの記事で解説しています。
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