スピンを重視するなら、まずはポリエステルガットが有力な選択肢です。
ただ、カギになるのは素材や形だけではなく、スナップバックという現象なんです。
「スピンがかかるガットはどれ?」は、私がストリンガーをしていたころ、お客さんから本当によく聞かれた質問です。
この記事では、元ストリンガー・元インターハイ選手の目線で、スピンがかかる仕組み、スピンがかかりやすいガットおすすめ4選、ポリ以外の選択肢、テンションとの関係まで解説します。
結論:スピン重視なら「ガットの滑り」と「スナップバック」に注目
- スピンには、縦糸が横にずれて元に戻るスナップバックが大きく関係する
- スピン重視ならポリエステルが有力。ガット同士が滑りやすく、スナップバックが起きやすい
- おすすめはポリツアーレブ、ハイパーG、RPMブラスト、フォーカスヘックスの4本
- 肘が心配な人や初心者は、ナイロンから選ぶのもあり
- テンションは下げれば必ずスピンが増えるわけではない。±2ポンドずつ試す
- いちばん大事なのは、やっぱりスイング
スピンがかかる仕組み「スナップバック」とは?
スピンを考えるうえで重要なのが、スナップバック(Snap-back)と呼ばれる現象です。ボールが当たって横にずれた縦糸が、元の位置に戻ろうとする動きのことです。
- ボールがガットに当たり、縦糸が横にずれる
- ずれた縦糸が、元の位置に戻ろうとする
- その戻る動きが、ボールに回転を与える
テニス用品の大手ショップ「Tennis Warehouse」の研究機関(TWU)の実験でも、縦糸が横に動いて戻れるセッティングほど、スピンが大きくなるという結果が出ています。
出典:Tennis Warehouse University「String Patterns And Spin」
スピンは「引っかかり」だけでは決まらない
スピンを考えるときは、2種類の摩擦を分けて考える必要があります。
| 摩擦の種類 | 関係すること |
|---|---|
| ① ボールとガットの摩擦 | ボールへの引っかかり |
| ② 縦糸と横糸の摩擦 | 縦糸が横に動きやすいかどうか |
スナップバックを起こすには、縦糸が横にずれて、元に戻る必要があります。
ガット同士が滑りにくいと、スナップバックが起きにくくなってしまうんです。
つまり、ボールへの引っかかりが強いだけでなく、ガット同士が滑りやすいことも大切です。
ポリエステルがスピンに強いのは、ナイロンよりもガット同士が滑りやすいからなんですね。
ナイロンからポリのハイブリッドに変えて、衝撃を受けた話
他の記事でも紹介しましたが、私は高校時代、監督の方針でナイロンのモノフィラメントガット(当時のYONEX 強チタン)しか使えませんでした。
その反動で、高校のテニス部を引退してから、いろいろなガットを試して勉強し、ガット張りも覚えました。
初めて自分で選んだセッティングは、
縦:プロハリケーンツアー(現RPMハリケーン)×
横:アディクション(現アディクション+)
のハイブリッドです。
私はもともと、スピンに特化したスイングではありませんでした。
それでも、ナイロン単張りからハイブリッドに変えただけで、ボールスピードもスピン量も倍になったような感覚があって、衝撃だったのを覚えています。
その一方で、「このガットに頼りきってはダメだ」とも思いました。ある程度のスイングスピードがないと、ポリのスピン性能は活かしきれません。
日々の練習やトレーニングも続けなきゃと痛感した体験でもありました。
ハイブリッドについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
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スピンがかかりやすいガットおすすめ4選
| ガット | 断面の形 | 特徴 |
|---|---|---|
| YONEX POLYTOUR REV(ポリツアーレブ) | 八角形 | シリコンオイルで滑りやすく、スナップバック重視 |
| SOLINCO HYPER-G(ハイパーG) | 五角形 | 強い食いつき。1.05mmの極細まである |
| BABOLAT RPM BLAST(RPMブラスト) | 八角形 | ナダルも使った定番。硬めでフルスイング向き |
| MSV Focus HEX(フォーカスヘックス) | 六角形 | 知る人ぞ知るブランド。コスパも◎ |
① YONEX POLYTOUR REV(ポリツアーレブ):スナップバックを重視したい人に
ポリツアーレブの特徴は、八角形の断面と、SIF(シリコンオイル・インフューズド・フィラメント)という製法です。
ガットの内部にシリコンオイルをしみ込ませることで、ガット同士を滑りやすくし、縦糸が動いて元に戻るのを助けることを狙っています。
- 八角形の断面
- SIF製法で、ガット同士が滑りやすい
- ゲージ:1.20mm・1.25mm・1.30mm
こんな人におすすめ:スピンとコントロールのバランスを重視したい人、スナップバックを意識してガットを選びたい人
② SOLINCO HYPER-G(ハイパーG):強い食いつきが欲しい人に
ハイパーGは、ソリンコを代表する人気のポリガットです。五角形の断面と、特徴的なグリーンのカラーが目印です。
角がボールに食いつき、スピンを生みやすい設計になっています。
- 五角形の断面
- スピンとパワーを重視した設計
- ゲージの種類が多く、珍しい極細ゲージ1.05mmまである
1.05mmまでの細ゲージは、なかなか類を見ないですね。
ゲージを細かく選べるので、自分のプレースタイルに合わせやすいのも魅力です。
ただし、細いゲージほど切れやすくなるので注意してください。
こんな人におすすめ:強烈なトップスピンを打ちたい人、細いゲージを試してみたい人
③ BABOLAT RPM BLAST(RPMブラスト):定番を試したい人に
RPMブラストは、ラファエル・ナダルが使っていたことで知られる、スピン系ガットの定番です。
八角形の断面で、ボールに強い回転をかけながら、フルスイングしてもコートに収めやすいのが特徴です。
- 八角形の断面
- スピンとコントロールを重視
- ゲージ:1.20mm・1.25mm・1.30mm・1.35mm
打球感はしっかりめの硬さなので、スイングスピードのある人に向いています。
こんな人におすすめ:定番のスピン系ガットを試したい人、フルスイングで打ちたい人
④ MSV Focus HEX(フォーカスヘックス):人とかぶりたくない人に
フォーカスヘックスは、ドイツのストリングブランドMSVのポリガットです。
日本ではまだ知名度は高くありませんが、海外ではスピンを重視する人に知られているモデルです。
- 六角形の断面で、ボールへの食いつきが良い
- スピンとコントロールを重視
- ゲージ:1.10mm・1.18mm・1.23mm・1.27mmなど
- 価格が手頃で、コスパが高い
国内では取り扱っているお店がかなり限られますが、定番ブランド以外を試してみたい人、他の人とかぶりたくない人には面白い選択肢です。
こんな人におすすめ:定番以外のガットを試したい人、スピンと価格のバランスを重視したい人
ポリ以外でスピンを出したいなら
スピン重視ならポリが一番の候補ですが、すべての人にポリが合うわけではありません。
次のような人は、ナイロンガットも考えてみてください。
- 肘や手首への負担が気になる
- まだスイングスピードが速くない
- テニスをする回数が少ない
- ポリの硬い打球感が苦手
ナイロンはポリより柔らかいものが多く、快適さを重視する人に向いています。
また、ポリはテンションが落ちやすく、ナイロンは落ちにくい傾向があるので、テニスの回数が少ない人にもナイロンをおすすめしています。
ただし、スピン性能だけで比べると、一般的なナイロンはやはりポリにはかないません。
ナイロンでおすすめ:HEAD Velocity MLT(ベロシティMLT)
- ナイロンのマルチフィラメント
- 表面の低摩擦コーティングで、スピン性能も高めている(メーカー公式の説明)
- 柔らかい打球感とパワーを重視
- ゲージ:1.25mm・1.30mm
ベロシティMLTはスピン特化のガットではありませんが、ナイロンの快適さを優先しながら、スピンも意識したい人の選択肢になります。
肘が心配な人や初心者は、無理にポリに変えるよりも、まずはナイロンの中から合うものを探すのがおすすめです。
スイングスピードが上がらないうちは、ポリの性能を十分に引き出せませんからね。
ただ、ナイロンだから肘を痛めない、というわけではありません。
痛みがあるときはまず練習量を減らすのが一番です。痛みが引かない場合は、病院で診てもらいましょう。
肘に優しいガットは、こちらの記事で紹介しています。
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テンションとスピンの関係:低いほどいいわけではない
一般的に、テンションを下げるとガット面が柔らかくなり、ボールが飛びやすくなります。
テンションを上げると、ガット面が硬くなり、コントロールしやすくなります。
スナップバックだけで考えると、「テンションを下げてガットが動きやすくなれば、スピンも増える」と思いますよね。
でも、ガットが横に動くだけでは足りません。
動いたガットが、ボールが離れる前に元に戻ることも必要です。テンションが低すぎると、ガットは動きやすくなりますが、元に戻る力が弱くなってしまいます。
つまり、テンションを下げれば必ずスピンが増えるわけではありません。ガットの種類やストリングパターンによっても変わります。
どのテンションから試せばいい?
スピン重視だからといって、いきなり大きくテンションを下げる必要はありません。
まずはラケットの適正テンションの範囲内で、2ポンドくらいの小さな変更から試しましょう。
例えば、今50ポンドなら、次は48ポンドにしてみる、という感じです。
試すときは、次のポイントを確認してみてください。
- ボールが飛びすぎていないか
- スピンをかけたときに、コートに収まるか
- 打球感が硬すぎないか
- ガットが動いて戻る感覚があるか
テンションを変えるときは、ガットの種類やゲージを同時に変えないのがコツです。
1つずつ変えたほうが、違いが分かりやすくなりますよ。自分に合うテンションの決め方は、こちらの記事で解説しています。
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ガット以外でスピンに大事なこと
ここまでガットの話をしてきましたが、スピン量はガットだけでは決まりません。特に大事なのが、ストリングパターンとスイングです。
ストリングパターン(16×19・18×20など)
ストリングパターンは、ラケットに張られている縦糸と横糸の本数です。16×19なら、縦糸16本・横糸19本という意味です。
16×19のような目の粗いパターンは、18×20のような目の細かいパターンよりガットが動きやすく、スピンがかかりやすい傾向があります。
先ほどのTWUの実験でも、目の粗いパターンほどスピンが大きくなる結果が出ています。
よく「18×20は16×19より面圧が高い(ガット面が硬い)」と言われるのも、このためです。
さらにスピン寄りの「16×18」というパターンも
実は、16×19と18×20以外にも、16×18というパターンがあります。
ラケット界全体で見るとかなり少数派ですが、スピン量を増やすことを目的のひとつとして採用されているパターンです。
横糸が1本少ない分、16×19よりもさらに目が粗くなります。
- Wilson ULTRA 99 PRO V5
- DUNLOP FX 500 LITE
- PRINCE PHANTOM GRAPHITE 100XS(XSは「エクストラスピン」の略)
スピン系のガットと組み合わせれば、回転量をさらに増やせる可能性があります。
ただし、目が粗いほどガットが動きやすくなるので、ガットが切れやすくなることも覚えておいてくださいね。
とはいえ、ストリングパターンだけでスピンが決まるわけではありません。
フェイスの大きさやテンションなども関係します。
スイングスピードとスイングの軌道
スピンをかけるうえで、いちばん大事なのはスイングです。
スピン系のガットに変えても、スイングが変わらなければ、回転量が劇的に増えることはありません。
トップスピンを増やすには、ラケットヘッドを加速させながら、ボールの下から上へ振り抜くことが大切です。
ただ、ボールを薄くこするだけでは、威力も深さも出ません。
体重移動をしっかり行いながらボールをとらえ、スイングの軌道で回転をかけることを意識しましょう。
スピン系のガットは、回転量を増やすための手段のひとつにすぎません。
ガット・ラケット・スイングのバランスを考えながら、自分に合ったセッティングを探していきましょう。
まとめ
- スピンには、縦糸が横にずれて元に戻るスナップバックが大きく関係する
- ボールへの引っかかりだけでなく、ガット同士の滑りやすさも大事
- スピン重視ならポリが有力。おすすめはポリツアーレブ、ハイパーG、RPMブラスト、フォーカスヘックス
- 肘が心配な人や初心者は、ナイロンから選ぶのもあり
- テンションは下げれば必ずスピンが増えるわけではない。2ポンドずつ試す
- 16×19や16×18のような目の粗いパターンは、比較的スピンがかかりやすい
- いちばん大事なのはスイング。ガットは手段のひとつ
ガット選びで迷ったら、まずはスピンを優先するのか、打球感や肘への負担を優先するのかを考えてみましょう。
自分に合ったガットとテンションを見つけて、質の高いスピンボールを目指してくださいね。
そして、ガットを変えたら練習もセットで。私のように「ガットに頼りきり」にならないように、一緒に頑張りましょう(笑)。