こんにちは。ほそべーです。
「最近、肘が痛くて……。肘に優しいガットってありますか?」
ストリンガーとして年間1,000本以上ガットを張っていたころ、張り替え時期と並んでよく聞かれたのがこの質問です。
ガットの素材とテンションを見直すだけで、肘への負担はかなり変わります。実際に、ガットを変えて肘が快方に向かい、「テニスの世界が変わった」と言ってくれたお客さんもいました。
この記事では、元ストリンガーの経験から、肘に優しいガットの素材とテンション、おすすめのガット7本、そしてガット以外でできる対策まで解説します。
※肘に痛みがある方は、まず整形外科などの医療機関を受診してくださいね。
結論:肘に優しいガットの選び方
- 素材はナチュラル > ナイロンマルチ > ナイロンモノ > ポリの順に肘に優しい
- 一般プレーヤーに一番おすすめなのはナイロンマルチ
- テンションはラケットの推奨から2〜10ポンド下げる
- 痛みがあるなら、我慢してプレーを続けない。まずは病院へ
素材別|肘への優しさの比較
| 素材 | 肘への優しさ | 特徴 |
|---|---|---|
| ナチュラル | ◎ | 柔らかく、衝撃吸収性に優れる。ただし価格がとても高く、湿気に弱い |
| ナイロン(マルチフィラメント) | ○ | 細い繊維を束ねた構造で、柔らかい打球感。一般プレーヤーに一番おすすめ |
| ナイロン(モノフィラメント) | △ | 比較的安い。しっかりめの打球感が多いが、ポリよりは優しい |
| ポリエステル | × | 硬めの打球感で、衝撃が大きくなりやすい |
ナチュラルガット:肘への優しさは一番
柔らかく、衝撃吸収性に優れているので、肘への優しさが最も期待できるガットです。ただ、価格がとにかく高いことと、湿気に弱いなど扱いが難しいことが難点です。
ナイロン(マルチフィラメント):一般プレーヤーに一番おすすめ
細い繊維を束ねた構造で、比較的柔らかい打球感です。ナチュラルほど高くなく、肘への負担を抑えたい方に一番おすすめです。
ナイロン(モノフィラメント):製品によっては柔らかいものも
比較的リーズナブルです。マルチよりも「カツンッ」としたしっかりめの打球感の製品が多いですが、製品によっては柔らかいものもあります。ポリに比べれば優しめです。
ポリエステル:肘に不安がある方はおすすめしません
硬めの打球感で、衝撃が大きくなりやすい傾向があります。肘に痛みがある間は避けるのが無難です。
※これは一般的な傾向です。同じ種類のガットでも、製品によって硬さは違うので、一概には言えません。
テンションは「低く、柔らかく」張る
結論からいうと、テンションを低く、柔らかく張るほうが、肘へのダメージは少なくなります。
ガットはテンションを低く張る方が肘へのダメージが少ないことは研究でも示されていて、英国のテニス協会も、肘に痛みがあるときはポリを避けて柔らかい素材のガットを張ることをすすめています。
参考研究:ガットのテンションと肘への負荷
2016年に発表されたMohandhasらの研究では、一般テニスプレーヤー20人を対象に、異なるテンションで張ったラケットを使用してバックハンドを打った際の肘の加速度を測定しています。
その結果、テンション200N(約45ポンド)のラケットでは肘の平均ピーク加速度が5.58m/s²、222N(約50ポンド)では6.83m/s²、245N(約55ポンド)では7.45m/s²となりました。
この研究では、低いテンションのラケットほど肘で測定されるピーク加速度が小さくなる傾向が確認されています。
出典:
Mohandhas BR, Makaram N, Drew TS, Wang W, Arnold GP, Abboud RJ.
"Racquet string tension directly affects force experienced at the elbow: implications for the development of lateral epicondylitis in tennis players."
Shoulder & Elbow. 2016;8(3):184–191.
具体的には、ラケットの推奨テンションから最低でも2ポンドは下げたいところです。10ポンドくらいまでなら下げても大丈夫だと考えています。
肘に優しいおすすめガット7選
ナチュラル、ナイロンマルチ、そして「意外な1本」としてナイロンモノから選びました。
ナチュラルガット
Babolat TOUCH TONIC(タッチトニック)
ナチュラルガットの中で最も安い部類のガットです。耐久性も比較的良いので、初めてナチュラルを試す方におすすめです。
LUXILON NATURAL GUT
ナチュラルガットの中で最もコスパが良いと思っているガットです。快適性とテンション維持性が高く、低摩擦コーティングでスナップバックしやすい(スピンがかかりやすい)と言われています。
私は、このガットはハイブリッドで張ることで真価を発揮すると考えています。縦か横のどちらかにナイロン(個人的にはモノがおすすめ)を張れば、性能的にも肘的にも◎です。ナチュラルを1張り分買うより、価格も抑えられます。
ナイロン(マルチフィラメント)
おすすめのナイロンマルチは、目的別に4本選びました。
| 目的 | ガット |
|---|---|
| 総合力 | Tecnifibre X-ONE BIPHASE |
| 柔らかさ重視 | Tecnifibre TGV |
| コスパ | Tecnifibre XCEL |
| 低価格 | Tecnifibre MULTIFEEL |
総合力:Tecnifibre X-ONE BIPHASE
柔らかさ・反発・快適性のバランスが良い、総合力の高いガットです。迷ったらまずこれ、という1本です。
柔らかさ重視:Tecnifibre TGV
とにかく柔らかさを重視したい方におすすめです。
コスパ:BABOLAT XCEL
マイルドな打球感と価格のバランスが良く、コスパが高いガットです。
低価格:Tecnifibre MULTIFEEL
マルチの中でも価格を抑えたい方におすすめです。
ナイロン(モノフィラメント):意外な1本
GOSEN OG-SHEEP MICRO(オージーシープ ミクロ)
分類はモノフィラメントですが、モノの中では比較的柔らかく、肘に優しいガットです。
実際にあったお客さんの話
ポリを1本張りで、テンション60ポンド(メーカー推奨より10ポンド高い)で張っているお客さんがいました。
理由は「張り替え代がもったいないから」。高いテンションで張っておけば、ガットが伸びきってもある程度使えるから、ということでした。(もちろん、体への負担的にもラケット的にも、おすすめはしていませんでした。)
そのお客さんが、冬に肘を壊してしまいました。そのとき相談を受けた条件は、「長く使えて、安い」「肘に優しい」ガット。
そこで、GOSEN ウミシマ AKコントロールを50ポンドで張ることにしました。
病院に通い、テニスの回数を減らしたこともあって、肘は快方に向かったそうです。それだけでなく、「ボレーやスライスが打ちやすくなって、テニスの世界が変わった」と言ってくれました。
そのとき私は、「ガットを変えると世界が変わるんですよ~」「この先に待っているのは、ガット沼とラケット沼ですね(笑)」と伝えたのを覚えています。
※選択肢が多すぎて、自分に合ったラケットやガット、その組み合わせがわからなくなることを、私の周りでは「ガット沼」「ラケット沼」と呼んでいます。
ラケットやグリップを変えるのはどう?
「ラケットを変えれば肘が楽になる?」と聞かれることもありますが、個人的には、ラケットを変えて肘への負担を減らすのは難しいと考えています。
- 軽いラケットにする:ボールを飛ばすのに力が必要になり、意外と腕への衝撃は大きくなることがあります
- 重いラケットにする:肘への負担が増えるので論外です
- グリップを細くする・太くする:細すぎると手首が遊びすぎ、太すぎると力を入れにくくなって、かえって腕に力が入ってしまいます。適正な太さが一番です。あえて細くしている方は、グリップテープを2枚巻きにして手首の遊びを抑えるのは効果ありかもしれません
- グリップテープを滑りにくいものに変える:これは肘への効果があると思います
- 振動止め:付けても付けなくても、肘や手首への影響はほとんどありません
ガット以外でできる肘の対策
痛くなったら、誰でもまずやるべきこと
① テニスの量を減らす
治るまでテニスをしないのが一番ですが、完全にやめる必要はありません。一番大切なのは、痛みを我慢してプレーを続けないことです。
- 痛みが出るショット(フォアで痛む?バックで痛む?サーブで痛む?)は、できるだけ打たない
- 痛みの強い日は思い切って休む
- 練習時間や頻度を落として、回復する時間をつくる
プレー中に痛みが増していく場合や、翌日まで痛みがはっきり残る場合はキッパリ休みましょう。
痛みを我慢してのテニスは怪我の悪化にもなりますし、練習のクオリティが下がります。
② 日常生活で肘に負担をかけない
意外と大事なのが、テニス以外の時間に肘に負担をかけないことです。
- 重いものを持つときは、手のひらを上に向ける
- 買い物袋を指先だけで持たない。痛いほうの腕で持たない
- タオルを強くしぼらない
- ドアノブを強く握って回さない
- パソコンのマウスなどを、長時間握り込まない
- 物を持つときは、必要以上に強く握らない
③ 肘のケアをする
- 冷やす:氷のうや、タオルで包んだ保冷剤を、痛い部分に10分ほど当てて離す。これを数回くり返します
- 塗り薬を使う:消炎鎮痛成分を含む塗り薬など。長く使い続けず、痛みが消えないなら病院へ行きましょう
予防のためにできること
- テニス肘用のサポーターを使う
- テーピングをする
- 前腕のストレッチ
- 前腕のトレーニング
サポーター、テーピングは、あくまで痛みをごまかすものだと考えています。痛みが出る前の予防として使うのはOKですが、痛くなったらまず病院に行くことをおすすめします。
ストレッチ、トレーニングも予防のためのものです。痛くなってから痛む部分を動かすことはむしろおすすめしません。
まとめ
- 肘に優しいのはナチュラル > ナイロンマルチ > ナイロンモノ > ポリ
- 一般プレーヤーにはナイロンマルチが一番おすすめ
- テンションは推奨から2〜10ポンド程度下げて、メーカー推奨より柔もらかく張ることがおすすめ
- ラケットを変えるより、ガットとテンションの見直しが効果的
- 痛みがあるなら、我慢してプレーを続けず、まず病院へ ⇐結局これ
ガットを変えると、肘が楽になるだけでなく、テニスの世界が変わることもあります。ぜひ、自分の肘に合うガットを探してみてください。
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