ガットの選び方

テニスガットの断面(丸・多角形)と表面加工の違いとは?スピンとの関係と選び方を元ストリンガーが解説

悩むAくん
悩むAくん
多角形のガットのほうが、スピンがかかるんでしょ?
丸いガットとは何が違うの?
こんにちは。ほそべーです。
実は、多角形だからスピンがかかる、というわけではないんです。
ガットの「形」と「表面の仕上げ」を分けて考えると、選び方がぐっと分かりやすくなりますよ。
ほそべー
ほそべー

この記事では、元ストリンガー・元インターハイ選手の目線で、ガットの断面(丸・多角形)の違い、ツルツル系とザラザラ系の違い、三角形〜十角形までの代表的なガット、そしてどんな人にどの形がおすすめかを解説します。
かなり奥が深いテーマなので、少しずつ順番に見ていきましょう。

結論:スピンは「形」だけでは決まらない

  • ガットの断面形状と表面加工は、別のもの
  • 多角形だから、ザラザラだから、スピンがかかるとは限らない
  • スピンは、断面形状・素材の硬さ・表面加工・ガット同士の滑りやすさ(スナップバック)の組み合わせで決まる
  • 角の数が少ないほどスピンがかかる、というわけでもない
  • 迷ったら、ポピュラーな五角形・六角形・八角形か丸型から選ぶ

前提:「断面形状」と「表面加工」は別のもの

まず押さえておきたいのが、この2つは混同されやすいけれど、別の要素だということです。

要素 影響すること
断面形状(丸・多角形) ボールへの引っかかりや、ガット同士の接触・動き
表面加工(ツルツル・ザラザラ) ボールやガット同士との摩擦・滑りやすさ

そして大前提として、多角形だからスピンがかかる、ザラザラしているからスピンがかかる、というわけではありません。
スピン性能は、断面形状だけでなく、素材の硬さ、表面加工、ガットの滑りやすさ、つまりスナップバックのしやすさなど、いくつもの要素が組み合わさって決まります。

スナップバックについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

【元ストリンガーが解説】スピンがかかるテニスガットおすすめ4選|仕組み・テンション・ナイロンの選び方

「スピンがかかるガットはどれ?」は、私がストリンガーをしていたころ、お客さんから本当によく聞かれた質問です。 この記事では、元ストリンガー・元インターハイ選手の目線で、スピンがかかる仕組み、スピンがか ...

スピン性能は「角の数」に比例する?

ここが、この記事で一番大事な考え方です。

角の数が少ないほど、角は鋭くなります。
なので、ボールに引っかかるイメージを持ちやすいですよね。
逆に、角の数が多くなるほど、断面は丸に近づいていきます。

では、三角形のガットが一番スピンがかかるのかというと、そうではありません。
実際のスピン性能は、角の数だけでは決まらないんです。
スピンに関係する要素には、次のようなものがあります。

  • ガット同士の摩擦(滑りやすさ)
  • スナップバックのしやすさ
  • ガットの硬さ(剛性)
  • 角の鋭さや丸み
  • 表面加工やコーティング
  • 使っているうちの摩耗や、ノッチ(ガットの交差部分にできる溝)

テニス用品の情報サイト「Racketpedia」の2025年の解説でも、五角形・六角形・八角形といった形そのものの影響は意外と小さく、摩擦やガットの硬さ、スナップバックの組み合わせのほうが大事だとされています。

出典:Racketpedia「The spin of a tennis string」(2025年)

丸いガットのメリット・デメリット

丸型は、最もオーソドックスな形です。
昔は、ほとんどのガットが丸型でした。

メリット

  • ガット同士の接触が比較的均一で、安定した打球感を得やすい
  • ガットの向きや張り方による影響を受けにくい
  • 多角形に比べて、摩耗が均一になりやすい

デメリット

  • 多角形ガットのような引っかかりは期待できない
  • ボールを強く引っかける感覚を求める人には、物足りない場合がある

丸型でもスピンがかかるガットはある

ただし、丸型でも十分なスピン性能を発揮するガットはあります。
表面が滑りやすく、スナップバックを利用しやすい丸型ポリは、スピン系のプレーヤーにも選択肢になります。

その代表が、YONEX ポリツアーファイアです。

  • 断面は丸型(パッケージの裏の断面イラストも丸です)
  • シリコンオイルをガットの内部まで浸透させるSIF製法
  • ガット同士が滑りやすく、素早く元に戻るスナップバックでスピンをかける
  • ゲージ:1.20mm・1.25mm・1.30mm

YONEX公式でも「SIF製法による高いスナップバック効果がスピンをアシスト」と紹介されています。
弾きが良く、バウンド後の伸びも優れたガットです。

多角形ガットのメリット・デメリット

多角形ガットとは、五角形・六角形・八角形など、断面に角があるタイプです。
ほとんどがポリエステルです。

ただ、珍しいものでは、ナイロンなのに六角形の「GENESIS Zona Spin Hexa(ジェネシス ゾーナスピン ヘキサ)」というガットもあります。
私もストリンガーをしていましたが、恥ずかしながら知りませんでした……。

メリット

  • 角によって、ボールへの引っかかりを感じやすい
  • ボールとの接触面積が小さくなるので、シャープな打球感を得やすい
  • スピンを重視するプレーヤーに向いている
  • 製品によっては、ボールをとらえる感覚がはっきりする

デメリット

  • ガット同士の接触が均一になりにくい
  • 角の部分が摩耗しやすい場合がある
  • 打球感が硬く感じられることが多い
  • ガット同士の引っかかりが強く、スナップバックを邪魔する場合もある

ここで大事なのが、角があることと、スナップバックしやすいことは同じではないという点です。
角がボールをとらえる効果と、ガットが滑って戻る効果は、分けて考えなければいけません。
多角形=スピン、というわけではないんです。

ツルツル系とザラザラ系の違い

断面の形とは別に、ガットには表面の仕上げの違いもあります。

種類 表面 考え方
ツルツル系 滑らかな表面・低摩擦を狙った加工 ガットを動かして回転を生む
ザラザラ系 凹凸・粗い表面(ラフ加工・凸凹加工) ボールに引っかけて回転を生む

昔は「ザラザラしているほうがボールに引っかかるので、スピンがかかる」と説明されることが多くありました。
でも今は、スナップバックの考え方も加わり、一概にザラザラ=スピンがかかりやすいとは言えなくなっています。

ツルツル系の特徴

  • 縦糸と横糸が滑りやすい
  • インパクトのとき、縦糸が横に動きやすい
  • 動いた縦糸が元に戻るスナップバックを利用しやすい
  • ガット同士の摩擦が小さい製品では、スピン性能を発揮しやすい

つまりツルツル系は、「ボールに引っかける」というより、ガットを動かして回転を生み出すという考え方です。
メーカーごとに、こんな工夫があります。

  • YONEX:SIF製法(シリコンオイルをガットの内部まで浸透させる)
  • BABOLAT:シリコンコーティング(RPMブラスト。ガットのスライド性を高める)

日本の研究者・川副嘉彦先生の研究室の実験でも、使い込んで溝のできたガットの交差部分に潤滑剤を塗ると、スピン量が回復したという結果が紹介されています。
ガット同士が滑ることが、スピンにとってどれだけ大事かが分かりますね。

出典:川副研究室「ストリング表面とスピンの関係」

ザラザラ系の特徴

  • ボールとの摩擦が大きくなる場合がある
  • ボールをとらえる感覚が強くなる場合がある
  • 表面の凹凸で、独特の打球感を得られる
  • 加工によっては、ガット同士の滑りにも影響する

代表的なのは、ルキシロンのアルパワー ラフのような、表面にラフ加工をしたガットです。

ただし、注意したいのが、ボールとの摩擦と、ガット同士の摩擦は別物だということ。
ボールとの摩擦が大きくても、ガット同士が滑りにくければ、スナップバックをじゃましてしまう可能性があります。
ここ、重要です。

アメリカのテニス用品店「Tennis Warehouse」の研究機関(TWU)の実験では、ボールに当たる面だけを粗くしたポリで試したところ、横糸がある面ではスピンが増えた一方で、縦糸だけの面ではほとんど増えなかったそうです。
つまり、ツルツルとザラザラのどちらが優れているかは、一概には決められないんです。

出典:Tennis Warehouse University「Spin and String Friction」

形と表面の組み合わせ

もう一つ大事なのが、表面加工と断面形状は別物だということです。
実際に、次のような組み合わせのガットがあります。

組み合わせ ガットの例
丸型+ツルツル YONEX ポリツアーファイア
丸型+ザラザラ LUXILON アルパワー ラフ
多角形+ツルツル BABOLAT RPMブラスト(八角形)、YONEX ポリツアーレブ(八角形)

また、表面が滑らかに感じられても、必ずしもコーティングのおかげとは限りません。
素材そのものの性質や、作り方によっても変わります。

角の数ごとの特徴と、代表的なガット

角の数は、打球感やスピンの傾向を考えるヒントにはなります。
ただ、角の数だけで性能やおすすめを決められるわけではありません。
この前提で、形ごとの特徴を整理してみます。

形 特徴 おすすめの人
三角形 角が非常に鋭く、理論上は強い引っかかりを狙った形 強い引っかかりを求める人。ただし市販品は少ない
四角形 角が鋭く、ボールをつかむ感覚を得やすい スイングが比較的ゆっくりでも、回転をかけたい人
五角形 引っかかりと、ガットの動きのバランスを狙いやすい トップスピンを増やしたい人、回転重視のストローカー
六角形 多角形の中でも一般的。引っかかりを感じやすい スピン重視の一般プレーヤー、弾道を上げたい人
七角形 六角形と八角形の中間 強すぎない引っかかりと、滑りやすさの両方がほしい人
八角形 角が細かくなり、丸に近づく。引っかかりと滑りのバランス型 スピンも欲しいが、打球スピードや伸びも重視したい人
十角形 丸にかなり近く、角の引っかかりは控えめ 強いスイングで、スナップバックを活かしたい人

※あくまで目安です。
同じ形でも、角の鋭さや素材、表面加工によって性能は変わります。

三角形:ISOSPEED PYRAMID(ピラミッド)

  • 珍しい三角形の断面
  • 液体ワックスコーティングを採用
  • ダブルヒーティング製法で、耐久性を高めている
  • トップスピンやスライスを打つプレーヤー向け

こんな人におすすめ:スピン性能を求めながら、耐久性も重視したい人

四角形:Tecnifibre BLACKCODE 4S(ブラックコード 4S)

  • 四角形の断面で、ボールへの引っかかりを重視
  • メーカーは「攻撃パワースピンの四角形」と紹介
  • 独自のサーモコア製法
  • 柔らかさとシャープさを両立した打球感

こんな人におすすめ:スピンをかけながら、攻撃的なボールを打ちたい人

五角形:Tecnifibre BLACKCODE ブラックコード(ほそべーの大好きなガット!)

  • 五角形の断面
  • 特殊添加剤・特殊コーティングを採用
  • ボールへの食いつき感が強い
  • 柔らかい打球感(多角形ポリの中では柔らかめだと感じています)

こんな人におすすめ:スピン性能を求めつつ、硬すぎない打球感が好きな人

私はこのブラックコードを縦糸に張って、ずっと愛用しています。
ポリなのに、グシャッとボールをつかめるような打球感が大好きなんです。
私のセッティングは、こちらの記事で紹介しています。

テニスガットのゲージ(太さ)の違いとは?細い・太いのメリット・デメリットを元ストリンガーが解説

この記事では、元ストリンガー・元インターハイ選手の目線で、ゲージ(太さ)による性能の違い、部活生・初心者におすすめのゲージ、ゲージとテンションの関係、そして私のセッティングまで解説します。 結論:細い ...


五角形:SOLINCO HYPER-G(ハイパーG)

  • 五角形の断面
  • 強いスピン性能とパワーが特徴
  • ボールへの引っかかりを活かした、高い弾道のショットが持ち味
  • メーカーはテンション維持の性能もアピール

こんな人におすすめ:トップスピンを多用して、ベースラインから積極的に攻めたい人

五角形:YONEX POLYTPUR SPIN(ポリツアースピン)

  • 五角形のエッジを活かしたスピン系のガット
  • YONEX公式も「5角形モノフィラメントがスピン性能を高める」と紹介
  • 回転をかけてコートに収めるストロークに向いている

こんな人におすすめ:強いトップスピンをかけて、安定したストロークを打ちたい人

六角形:HEAD LYNX TOUR(リンクスツアー)

  • 六角形の断面
  • スピン性能とコントロール性能を両立
  • 中〜速めのスイングのプレーヤー向け

こんな人におすすめ:スピンだけでなく、コントロールや安定性も重視したい人

七角形:SIGNUM PRO Tornado(トルネード)

  • 七角形の断面に、さらにねじれを加えた構造
  • ボールへの引っかかりを重視
  • ねじれ構造による、柔らかさや弾力性も特徴

こんな人におすすめ:強い回転を求めながら、打球感の快適さも大切にしたい人

八角形:BABOLAT RPM BLAST(RPMブラスト)

  • 八角形の断面
  • シリコンコーティングで、ガットのスライド性を高めている
  • 強いスピンとコントロールを重視。しっかりした打球感
  • ナダルと共に開発されたスピン系ガットの定番

こんな人におすすめ:自分からしっかり振り切って、強いスピンとコントロールを求める人

八角形:YONEX POLYTOUR REV(ポリツアーレブ)

  • 八角形の断面による、ボールへの食いつき
  • SIF製法で、素早く元に戻るスナップバック
  • YONEX公式では「ハードヒッター向け」と紹介

こんな人におすすめ:スピンをかけながら、ボールのスピードや伸びも重視したい人

十角形:GENESIS TRUE GRIT(トゥルーグリット)

  • 十角形の断面に、ねじれを加えた構造
  • スピン性能とパワーの両立
  • テンション維持の性能も高いとされる

こんな人におすすめ:スピンだけでなく、パワーや打球感とのバランスも求めたい人

10本のガットを比較

角数 ガット 主な特徴 おすすめタイプ
3 ISOSPEED ピラミッド 三角形・ワックスコーティング・耐久性 スピン・スライス重視
4 Tecnifibre 4S パワー・スピン・シャープな打球感 攻撃的なストローカー
5 Tecnifibre ブラックコード 食いつき・柔らかめの打球感 スピンと快適さ
5 SOLINCO ハイパーG 強いスピン・パワー・高弾道 トップスピン主体
5 YONEX ポリツアースピン 引っかかり・回転性能 スピン重視
6 HEAD リンクスツアー スピン・コントロール 安定性重視
7 SIGNUM PRO トルネード ねじれ構造・スピン・快適さ 回転と打球感の両立
8 BABOLAT RPMブラスト 強いスピン・コントロール 強く振り切る人
8 YONEX ポリツアーレブ スピン・スナップバック・スピード 回転と球威の両立
10 GENESIS トゥルーグリット ねじれ構造・スピン・パワー 総合性能重視

一般プレーヤーなら、どの形がおすすめ?

実際に選ぶときは、次のように考えると分かりやすいと思います。

  • 回転量を増やしたい人 → まずは五角形・六角形。ボールをつかむ感覚や引っかかりを求める人向け
  • 強いボールを打ちたい人 → 丸型・八角形あたり。強いスイングでガットを動かし、スナップバックを活かしたい人向け
  • レクリエーションで楽しむ人 → ポピュラーな六角形・八角形から選ぶと比べやすい。極端な形から試す必要はない
  • スライスやボレーも重視する人 → 丸型も有力。引っかかりの強さより、素直な打球感やガットの滑りを重視

ボレーやスライスを多用するフェデラーや鈴木貴男選手も、丸型のガット(ナチュラルガットなど)を長く使っていますね。

そして、三角形・四角形・十角形のような極端な形のガットは、国内で売られている商品も多くありません。
そこからも分かる通り、合うプレーヤーは少ないように思います。
ストリンガー時代も、「お試しで張ってみよーっと」という注文がたまーにありましたが、その注文が続くことはなかったですね。

ここで強調したいのは、初心者だから丸型、上級者だから多角形という分け方はしない、ということです。
初心者でもスピンをかけたい人はいますし、上級者でも丸型が好きな人はいます。
また、ポリの場合は、形よりもガットの硬さや体への負担も考えて選んでほしいです。
ほそべー
ほそべー

ハイブリッドで、多角形と丸型を組み合わせる方法もあります。
ただし、角によって相手側のガットが摩耗しやすくなる場合もあるので、耐久性とのバランスも考えましょう。

【元ストリンガーが解説】テニスガットのハイブリッドとは?メリット・デメリットと目的別おすすめの組み合わせ

実は私も、自分のラケットに張るときはほぼ100%ハイブリッドです。ただし、ハイブリッドは万人におすすめできる張り方ではありません。 この記事では、元ストリンガーの目線で、ハイブリッドの基本、目的別のお ...

多角形ガットは寿命が短い?

お客さんから、「多角形は丸型より寿命が短いからなー」と言われることもよくありました。
でも実は、一概にそうとは言えないんです。
多角形ガットが使っているうちにどう変わるのか、張り替えのサインはどこなのか、こちらの記事で詳しく解説しています。

多角形ガットは寿命が短い?使うと起きる変化(ノッチ)と張り替えのサインを元ストリンガーが解説

この記事では、元ストリンガー・元インターハイ選手の目線で、多角形ガットの寿命の考え方、使っているうちに起きる変化、そして張り替えのサインを解説します。 結論:多角形だから寿命が短い、とは言い切れない ...

まとめ

  • 断面形状と表面加工は別のもの。分けて考える
  • 多角形だから、ザラザラだから、スピンがかかるとは限らない
  • スピンは、形・硬さ・表面・ガット同士の滑りやすさ(スナップバック)の組み合わせで決まる
  • 角の数が少ないほどスピンがかかる、というわけではない
  • 丸型でも、ポリツアーファイアのようにスピンがかかるガットはある
  • 迷ったら、ポピュラーな五角形・六角形・八角形か丸型から
  • 初心者だから丸型、上級者だから多角形、とは考えない

ガットの形は、選ぶときのヒントのひとつです。
形だけにとらわれず、打球感や体への負担、自分のプレースタイルと合わせて、ぴったりの1本を探してみてくださいね。

-ガットの選び方