丸いガットとは何が違うの?
実は、多角形だからスピンがかかる、というわけではないんです。
ガットの「形」と「表面の仕上げ」を分けて考えると、選び方がぐっと分かりやすくなりますよ。
この記事では、元ストリンガー・元インターハイ選手の目線で、ガットの断面(丸・多角形)の違い、ツルツル系とザラザラ系の違い、三角形〜十角形までの代表的なガット、そしてどんな人にどの形がおすすめかを解説します。
かなり奥が深いテーマなので、少しずつ順番に見ていきましょう。
結論:スピンは「形」だけでは決まらない
- ガットの断面形状と表面加工は、別のもの
- 多角形だから、ザラザラだから、スピンがかかるとは限らない
- スピンは、断面形状・素材の硬さ・表面加工・ガット同士の滑りやすさ(スナップバック)の組み合わせで決まる
- 角の数が少ないほどスピンがかかる、というわけでもない
- 迷ったら、ポピュラーな五角形・六角形・八角形か丸型から選ぶ
前提:「断面形状」と「表面加工」は別のもの
まず押さえておきたいのが、この2つは混同されやすいけれど、別の要素だということです。
| 要素 | 影響すること |
|---|---|
| 断面形状(丸・多角形) | ボールへの引っかかりや、ガット同士の接触・動き |
| 表面加工(ツルツル・ザラザラ) | ボールやガット同士との摩擦・滑りやすさ |
そして大前提として、多角形だからスピンがかかる、ザラザラしているからスピンがかかる、というわけではありません。
スピン性能は、断面形状だけでなく、素材の硬さ、表面加工、ガットの滑りやすさ、つまりスナップバックのしやすさなど、いくつもの要素が組み合わさって決まります。
スナップバックについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
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スピン性能は「角の数」に比例する?
ここが、この記事で一番大事な考え方です。
角の数が少ないほど、角は鋭くなります。
なので、ボールに引っかかるイメージを持ちやすいですよね。
逆に、角の数が多くなるほど、断面は丸に近づいていきます。
では、三角形のガットが一番スピンがかかるのかというと、そうではありません。
実際のスピン性能は、角の数だけでは決まらないんです。
スピンに関係する要素には、次のようなものがあります。
- ガット同士の摩擦(滑りやすさ)
- スナップバックのしやすさ
- ガットの硬さ(剛性)
- 角の鋭さや丸み
- 表面加工やコーティング
- 使っているうちの摩耗や、ノッチ(ガットの交差部分にできる溝)
テニス用品の情報サイト「Racketpedia」の2025年の解説でも、五角形・六角形・八角形といった形そのものの影響は意外と小さく、摩擦やガットの硬さ、スナップバックの組み合わせのほうが大事だとされています。
丸いガットのメリット・デメリット
丸型は、最もオーソドックスな形です。
昔は、ほとんどのガットが丸型でした。
メリット
- ガット同士の接触が比較的均一で、安定した打球感を得やすい
- ガットの向きや張り方による影響を受けにくい
- 多角形に比べて、摩耗が均一になりやすい
デメリット
- 多角形ガットのような引っかかりは期待できない
- ボールを強く引っかける感覚を求める人には、物足りない場合がある
丸型でもスピンがかかるガットはある
ただし、丸型でも十分なスピン性能を発揮するガットはあります。
表面が滑りやすく、スナップバックを利用しやすい丸型ポリは、スピン系のプレーヤーにも選択肢になります。
その代表が、YONEX ポリツアーファイアです。
- 断面は丸型(パッケージの裏の断面イラストも丸です)
- シリコンオイルをガットの内部まで浸透させるSIF製法
- ガット同士が滑りやすく、素早く元に戻るスナップバックでスピンをかける
- ゲージ:1.20mm・1.25mm・1.30mm
YONEX公式でも「SIF製法による高いスナップバック効果がスピンをアシスト」と紹介されています。
弾きが良く、バウンド後の伸びも優れたガットです。
多角形ガットのメリット・デメリット
多角形ガットとは、五角形・六角形・八角形など、断面に角があるタイプです。
ほとんどがポリエステルです。
ただ、珍しいものでは、ナイロンなのに六角形の「GENESIS Zona Spin Hexa(ジェネシス ゾーナスピン ヘキサ)」というガットもあります。
私もストリンガーをしていましたが、恥ずかしながら知りませんでした……。
メリット
- 角によって、ボールへの引っかかりを感じやすい
- ボールとの接触面積が小さくなるので、シャープな打球感を得やすい
- スピンを重視するプレーヤーに向いている
- 製品によっては、ボールをとらえる感覚がはっきりする
デメリット
- ガット同士の接触が均一になりにくい
- 角の部分が摩耗しやすい場合がある
- 打球感が硬く感じられることが多い
- ガット同士の引っかかりが強く、スナップバックを邪魔する場合もある
ここで大事なのが、角があることと、スナップバックしやすいことは同じではないという点です。
角がボールをとらえる効果と、ガットが滑って戻る効果は、分けて考えなければいけません。
多角形=スピン、というわけではないんです。
ツルツル系とザラザラ系の違い
断面の形とは別に、ガットには表面の仕上げの違いもあります。
| 種類 | 表面 | 考え方 |
|---|---|---|
| ツルツル系 | 滑らかな表面・低摩擦を狙った加工 | ガットを動かして回転を生む |
| ザラザラ系 | 凹凸・粗い表面(ラフ加工・凸凹加工) | ボールに引っかけて回転を生む |
昔は「ザラザラしているほうがボールに引っかかるので、スピンがかかる」と説明されることが多くありました。
でも今は、スナップバックの考え方も加わり、一概にザラザラ=スピンがかかりやすいとは言えなくなっています。
ツルツル系の特徴
- 縦糸と横糸が滑りやすい
- インパクトのとき、縦糸が横に動きやすい
- 動いた縦糸が元に戻るスナップバックを利用しやすい
- ガット同士の摩擦が小さい製品では、スピン性能を発揮しやすい
つまりツルツル系は、「ボールに引っかける」というより、ガットを動かして回転を生み出すという考え方です。
メーカーごとに、こんな工夫があります。
- YONEX:SIF製法(シリコンオイルをガットの内部まで浸透させる)
- BABOLAT:シリコンコーティング(RPMブラスト。ガットのスライド性を高める)
日本の研究者・川副嘉彦先生の研究室の実験でも、使い込んで溝のできたガットの交差部分に潤滑剤を塗ると、スピン量が回復したという結果が紹介されています。
ガット同士が滑ることが、スピンにとってどれだけ大事かが分かりますね。
ザラザラ系の特徴
- ボールとの摩擦が大きくなる場合がある
- ボールをとらえる感覚が強くなる場合がある
- 表面の凹凸で、独特の打球感を得られる
- 加工によっては、ガット同士の滑りにも影響する
代表的なのは、ルキシロンのアルパワー ラフのような、表面にラフ加工をしたガットです。
ただし、注意したいのが、ボールとの摩擦と、ガット同士の摩擦は別物だということ。
ボールとの摩擦が大きくても、ガット同士が滑りにくければ、スナップバックをじゃましてしまう可能性があります。
ここ、重要です。
アメリカのテニス用品店「Tennis Warehouse」の研究機関(TWU)の実験では、ボールに当たる面だけを粗くしたポリで試したところ、横糸がある面ではスピンが増えた一方で、縦糸だけの面ではほとんど増えなかったそうです。
つまり、ツルツルとザラザラのどちらが優れているかは、一概には決められないんです。
形と表面の組み合わせ
もう一つ大事なのが、表面加工と断面形状は別物だということです。
実際に、次のような組み合わせのガットがあります。
| 組み合わせ | ガットの例 |
|---|---|
| 丸型+ツルツル | YONEX ポリツアーファイア |
| 丸型+ザラザラ | LUXILON アルパワー ラフ |
| 多角形+ツルツル | BABOLAT RPMブラスト(八角形)、YONEX ポリツアーレブ(八角形) |
また、表面が滑らかに感じられても、必ずしもコーティングのおかげとは限りません。
素材そのものの性質や、作り方によっても変わります。
角の数ごとの特徴と、代表的なガット
角の数は、打球感やスピンの傾向を考えるヒントにはなります。
ただ、角の数だけで性能やおすすめを決められるわけではありません。
この前提で、形ごとの特徴を整理してみます。
| 形 | 特徴 | おすすめの人 |
|---|---|---|
| 三角形 | 角が非常に鋭く、理論上は強い引っかかりを狙った形 | 強い引っかかりを求める人。ただし市販品は少ない |
| 四角形 | 角が鋭く、ボールをつかむ感覚を得やすい | スイングが比較的ゆっくりでも、回転をかけたい人 |
| 五角形 | 引っかかりと、ガットの動きのバランスを狙いやすい | トップスピンを増やしたい人、回転重視のストローカー |
| 六角形 | 多角形の中でも一般的。引っかかりを感じやすい | スピン重視の一般プレーヤー、弾道を上げたい人 |
| 七角形 | 六角形と八角形の中間 | 強すぎない引っかかりと、滑りやすさの両方がほしい人 |
| 八角形 | 角が細かくなり、丸に近づく。引っかかりと滑りのバランス型 | スピンも欲しいが、打球スピードや伸びも重視したい人 |
| 十角形 | 丸にかなり近く、角の引っかかりは控えめ | 強いスイングで、スナップバックを活かしたい人 |
※あくまで目安です。
同じ形でも、角の鋭さや素材、表面加工によって性能は変わります。
三角形:ISOSPEED PYRAMID(ピラミッド)
- 珍しい三角形の断面
- 液体ワックスコーティングを採用
- ダブルヒーティング製法で、耐久性を高めている
- トップスピンやスライスを打つプレーヤー向け
こんな人におすすめ:スピン性能を求めながら、耐久性も重視したい人
四角形:Tecnifibre BLACKCODE 4S(ブラックコード 4S)
- 四角形の断面で、ボールへの引っかかりを重視
- メーカーは「攻撃パワースピンの四角形」と紹介
- 独自のサーモコア製法
- 柔らかさとシャープさを両立した打球感
こんな人におすすめ:スピンをかけながら、攻撃的なボールを打ちたい人
五角形:Tecnifibre BLACKCODE ブラックコード(ほそべーの大好きなガット!)
- 五角形の断面
- 特殊添加剤・特殊コーティングを採用
- ボールへの食いつき感が強い
- 柔らかい打球感(多角形ポリの中では柔らかめだと感じています)
こんな人におすすめ:スピン性能を求めつつ、硬すぎない打球感が好きな人
私はこのブラックコードを縦糸に張って、ずっと愛用しています。
ポリなのに、グシャッとボールをつかめるような打球感が大好きなんです。
私のセッティングは、こちらの記事で紹介しています。
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五角形:SOLINCO HYPER-G(ハイパーG)
- 五角形の断面
- 強いスピン性能とパワーが特徴
- ボールへの引っかかりを活かした、高い弾道のショットが持ち味
- メーカーはテンション維持の性能もアピール
こんな人におすすめ:トップスピンを多用して、ベースラインから積極的に攻めたい人
五角形:YONEX POLYTPUR SPIN(ポリツアースピン)
- 五角形のエッジを活かしたスピン系のガット
- YONEX公式も「5角形モノフィラメントがスピン性能を高める」と紹介
- 回転をかけてコートに収めるストロークに向いている
こんな人におすすめ:強いトップスピンをかけて、安定したストロークを打ちたい人
六角形:HEAD LYNX TOUR(リンクスツアー)
- 六角形の断面
- スピン性能とコントロール性能を両立
- 中〜速めのスイングのプレーヤー向け
こんな人におすすめ:スピンだけでなく、コントロールや安定性も重視したい人
七角形:SIGNUM PRO Tornado(トルネード)
- 七角形の断面に、さらにねじれを加えた構造
- ボールへの引っかかりを重視
- ねじれ構造による、柔らかさや弾力性も特徴
こんな人におすすめ:強い回転を求めながら、打球感の快適さも大切にしたい人
八角形:BABOLAT RPM BLAST(RPMブラスト)
- 八角形の断面
- シリコンコーティングで、ガットのスライド性を高めている
- 強いスピンとコントロールを重視。しっかりした打球感
- ナダルと共に開発されたスピン系ガットの定番
こんな人におすすめ:自分からしっかり振り切って、強いスピンとコントロールを求める人
八角形:YONEX POLYTOUR REV(ポリツアーレブ)
- 八角形の断面による、ボールへの食いつき
- SIF製法で、素早く元に戻るスナップバック
- YONEX公式では「ハードヒッター向け」と紹介
こんな人におすすめ:スピンをかけながら、ボールのスピードや伸びも重視したい人
十角形:GENESIS TRUE GRIT(トゥルーグリット)
- 十角形の断面に、ねじれを加えた構造
- スピン性能とパワーの両立
- テンション維持の性能も高いとされる
こんな人におすすめ:スピンだけでなく、パワーや打球感とのバランスも求めたい人
10本のガットを比較
| 角数 | ガット | 主な特徴 | おすすめタイプ |
|---|---|---|---|
| 3 | ISOSPEED ピラミッド | 三角形・ワックスコーティング・耐久性 | スピン・スライス重視 |
| 4 | Tecnifibre 4S | パワー・スピン・シャープな打球感 | 攻撃的なストローカー |
| 5 | Tecnifibre ブラックコード | 食いつき・柔らかめの打球感 | スピンと快適さ |
| 5 | SOLINCO ハイパーG | 強いスピン・パワー・高弾道 | トップスピン主体 |
| 5 | YONEX ポリツアースピン | 引っかかり・回転性能 | スピン重視 |
| 6 | HEAD リンクスツアー | スピン・コントロール | 安定性重視 |
| 7 | SIGNUM PRO トルネード | ねじれ構造・スピン・快適さ | 回転と打球感の両立 |
| 8 | BABOLAT RPMブラスト | 強いスピン・コントロール | 強く振り切る人 |
| 8 | YONEX ポリツアーレブ | スピン・スナップバック・スピード | 回転と球威の両立 |
| 10 | GENESIS トゥルーグリット | ねじれ構造・スピン・パワー | 総合性能重視 |
一般プレーヤーなら、どの形がおすすめ?
実際に選ぶときは、次のように考えると分かりやすいと思います。
- 回転量を増やしたい人 → まずは五角形・六角形。ボールをつかむ感覚や引っかかりを求める人向け
- 強いボールを打ちたい人 → 丸型・八角形あたり。強いスイングでガットを動かし、スナップバックを活かしたい人向け
- レクリエーションで楽しむ人 → ポピュラーな六角形・八角形から選ぶと比べやすい。極端な形から試す必要はない
- スライスやボレーも重視する人 → 丸型も有力。引っかかりの強さより、素直な打球感やガットの滑りを重視
ボレーやスライスを多用するフェデラーや鈴木貴男選手も、丸型のガット(ナチュラルガットなど)を長く使っていますね。
そして、三角形・四角形・十角形のような極端な形のガットは、国内で売られている商品も多くありません。
そこからも分かる通り、合うプレーヤーは少ないように思います。
ストリンガー時代も、「お試しで張ってみよーっと」という注文がたまーにありましたが、その注文が続くことはなかったですね。
初心者でもスピンをかけたい人はいますし、上級者でも丸型が好きな人はいます。
また、ポリの場合は、形よりもガットの硬さや体への負担も考えて選んでほしいです。
ハイブリッドで、多角形と丸型を組み合わせる方法もあります。
ただし、角によって相手側のガットが摩耗しやすくなる場合もあるので、耐久性とのバランスも考えましょう。
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多角形ガットは寿命が短い?
お客さんから、「多角形は丸型より寿命が短いからなー」と言われることもよくありました。
でも実は、一概にそうとは言えないんです。
多角形ガットが使っているうちにどう変わるのか、張り替えのサインはどこなのか、こちらの記事で詳しく解説しています。
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まとめ
- 断面形状と表面加工は別のもの。分けて考える
- 多角形だから、ザラザラだから、スピンがかかるとは限らない
- スピンは、形・硬さ・表面・ガット同士の滑りやすさ(スナップバック)の組み合わせで決まる
- 角の数が少ないほどスピンがかかる、というわけではない
- 丸型でも、ポリツアーファイアのようにスピンがかかるガットはある
- 迷ったら、ポピュラーな五角形・六角形・八角形か丸型から
- 初心者だから丸型、上級者だから多角形、とは考えない
ガットの形は、選ぶときのヒントのひとつです。
形だけにとらわれず、打球感や体への負担、自分のプレースタイルと合わせて、ぴったりの1本を探してみてくださいね。