何かいい方法はない?
そんな方に試してほしいのが、縦糸と横糸で別のガットを張るハイブリッドです。
実は私も、自分のラケットに張るときはほぼ100%ハイブリッドです。ただし、ハイブリッドは万人におすすめできる張り方ではありません。
この記事では、元ストリンガーの目線で、ハイブリッドの基本、目的別のおすすめの組み合わせ、向いている人・向いていない人、縦横のテンションの考え方、そしてプロ選手のセッティングまで解説します。
結論:
ハイブリッドは「2種類のガットのいいとこ取り」を狙う張り方
- ハイブリッドは、縦糸と横糸で別のガットを張る方法
- 定番はポリ+ナイロンとポリ+ナチュラルの2パターン
- 縦糸のガットの特徴が出やすい
- 縦横のテンション差は2ポンド程度までがおすすめ
- こだわりがない人、耐久性を最優先する人は単張りで十分
ハイブリッドとは?
ガット張りにおけるハイブリッドとは、縦糸と横糸で異なるガットを組み合わせて張る方法です。簡単に言えば、2種類のガットの「いいとこ取り」を狙う張り方です。
| 張り方 | 縦糸 | 横糸 |
|---|---|---|
| 通常の張り方(単張り) | 同じガット | 同じガット |
| ハイブリッド | 例:ポリエステル | 例:ナイロン |
例えば、縦糸にスピン性能やパワーが期待できるポリエステル、横糸に柔らかく反発性のあるナイロンを張る、という組み合わせです(その反対の組み合わせもあります)。
ハイブリッドで張るには、ガットを2種類用意する必要があります。2本張りに必要なガットの長さは、こちらの記事で解説しています。
-
-
【どっちが良いの?】1本張りと2本張りの違いをストリンガーが解説|2本張りの長さの目安も
こんにちは。ほそべーです。 テニスを頑張っている、楽しんでいる皆さん、 自分のラケットのガットについて、どう張られているかを知っていますか? ガット張りには細かく分けていく ...
ハイブリッドにする目的と、定番の2パターン
ハイブリッドの主な目的は、異なるガットの長所を組み合わせることです。定番は次の2パターンです。
| 組み合わせ | 狙い | 例 |
|---|---|---|
| ポリ+ナイロン | ポリのスピン性能と、ナイロンの柔らかさ | BABOLAT RPM BLAST(スピン性能が高い・硬い)+BABOLAT XCEL(柔らかい) |
| ポリ+ナチュラル | ポリのスピン性能と、ナチュラルの柔らかさ・反発性・打球感 | LUXILON ALU POWER ROUGH(反発力が高い・硬い)+ナチュラルガット(柔らかい・反発力が高い・ボールをつかむ打球感) |
ほかにも、ナイロン+ナイロン、ポリ+ポリのように同じ素材の別のガットを組み合わせることもありますが、かなり少数です。
ただし、組み合わせれば必ず両方の長所が得られるわけではありません。ガットの種類や太さ、テンションによって仕上がりは変わりますし、狙った結果にならないこともよくあります。
縦と横、どちらにポリを張る?
ハイブリッドでは、縦糸と横糸のどちらにポリを張るかでも、打球感が変わります。
- 縦ポリ × 横ナイロン:ポリの特徴が出やすい
- 縦ナイロン × 横ポリ:ナイロンの打球感が残りやすい
一般的に、縦糸のガットの影響を大きく感じます。「メインで感じたい特徴のガットを縦に張る」と覚えておくとわかりやすいです。
目的別のおすすめの組み合わせ
まずは組み合わせるナイロンガットを選ぶ
ハイブリッドは、使いたいポリガットに、目的に合ったナイロンガットを組み合わせるイメージで考えると選びやすいです。
| 目的 | おすすめのナイロン系ガット |
|---|---|
| 柔らかさ+打球感 | BABOLAT XCEL(エクセル) |
| 柔らかさ+コスパ | Tecnifibre MULTIFEEL(マルチフィール) |
| 反発力 | BABOLAT AddiXion+(アディクション+) |
| 柔らかさ+反発+テンション維持 | Tecnifibre X-ONE BIPHASE(バイフェイズ)
※比較的高価 |
| 耐久性+コスパ | BABOLAT BRIO(ブリオ) |
| 柔らかさ・反発・テンション維持・打球感のすべて | ナチュラルガット(どのメーカーでもOK)
※高価 |
スピンは欲しいけど、ポリ+ポリは硬くて飛ばない人へ
例①:縦 BABOLAT RPMブラスト × 横 BABOLAT XCEL
ブラストの強烈なスピン性能と、XCELの柔らかさ・打球感を両立できます。
例②:縦 YONEX ポリツアーレブ × 横 Tecnifibre MULTIFEEL
ポリツアーレブのスピンと反発力に、マルチフィールの柔らかさをプラスできます。
操作感を重視したい人へ
例:縦 ナチュラルガット × 横 LUXILON ALU POWER ROUGH(アルパワーラフ)
いわゆる、フェデラーが好んで使っていた組み合わせです。ナチュラルガットの反発力と柔らかさを前面に出し、アルパワーラフでパワーとスピンを補います。
ナチュラルガットは高価なので、縦をTecnifibre X-ONE BIPHASEにしたり、もっと価格を抑えたいならBABOLAT XCELやAddiXion+にしたりしても、見劣りはしますが似た効果を感じられます。
コスパを重視したい人へ
例:縦 BABOLAT RPMハリケーン × 横 BABOLAT BRIO(ブリオ)
縦横それぞれ1張り分ずつ買っても4,000円ほど。ハイブリッド1回あたり2,000円程度です。ブリオは耐久性もあるので、ハリケーンのスピン性能を活かしつつ、ナイロンの柔らかさと反発力も得られます。
ブリオについては、こちらの記事で詳しくインプレしています。
-
-
【インプレ】バボラ ブリオを元ストリンガーが本音で評価|手首に優しいけど柔らかくないマルチ
こんにちは。ほそべーです。 本当にめちゃくちゃ、暑い日が続いていますね。 皆さんテニスしていますか? 著者は、汗ダラダラで倒れそうになりながらでも、最低でも週1ではテニスをしています。 ...
肘に優しくしたい人へ
正直に言うと、ハイブリッドでさらに肘に優しくするというのは難しいと思います。肘が痛いなら、マルチフィラメントのガットで単張りするのがおすすめです。
-
-
【元ストリンガーが解説】肘に優しいテニスガットの選び方|素材・テンション・おすすめ7選
こんにちは。ほそべーです。 「最近、肘が痛くて……。肘に優しいガットってありますか?」 ストリンガーとして年間1,000本以上ガットを張っていたころ、張り替え時期と並んでよく聞かれたのがこの質問です。 ...
ハイブリッドが向いている人
① ポリの性能を活かしつつ、打球感を柔らかくしたい人
ポリはスピンやパワーを重視するプレーヤーに人気ですが、打球感の硬さが気になることもあります。横糸にナイロンを組み合わせることで、打球感や反発性を調整できます。
- ポリ+ポリでは打球感が硬すぎる
- ポリのスピン性能は欲しいけど、もう少し楽にボールを飛ばしたい
- ポリの性能は残したい
こうした人は、試す価値があります。
② 自分好みの打球感を追求したい人
| 組み合わせ | 狙える特徴 |
|---|---|
| 縦ポリ × 横マルチ | ポリの特徴を残しつつ、柔らかさを補う |
| 縦マルチ × 横ポリ | マルチの反発性を活かしながら、打球感を調整 |
| 縦ポリ × 横ナチュラル | ポリの特徴を残しつつ、反発力、快適性、柔らかさ、打球感をプラスする |
| 縦ナチュラル × 横ポリ | 反発性と快適性、コントロールの両立を狙う |
③ ポリ単張りで、腕への負担が気になる人
ポリ単張りから横ナイロンのハイブリッドに変えると、打球感がマイルドになります。ただし、縦にポリを使う以上、腕への負担が十分に軽くなるわけではありません。肘や手首に痛みがある人は、ナイロン単張りへの変更も考えてみてください。
④ ガット選びを楽しみたい人
ハイブリッドの組み合わせは無数にあります。ガットの種類だけでなく、太さ(ゲージ)やテンションを変えることでも違いが出るので、自分好みのセッティングを探す楽しさがあります。
ハイブリッドが向いていない人
① ガットに強いこだわりがない人
単張りなら1種類を選ぶだけですが、ハイブリッドは縦と横の2種類を選ばなければなりません。特にこだわりがなければ、単張りで十分です。
② ガット代をできるだけ安く抑えたい人
2種類のガットを使うので、組み合わせによっては単張りより費用が高くなります。ただ、どうしても使いたいガットが高価な場合は、もう片方を安いガットにすることで費用を抑えることもできます。
③ ガットの耐久性を最優先する人
素材の違うガット同士がこすれ合うので、片方が先にすり減ってしまうことがあります。特にポリ+ナイロンでは、ポリがナイロンを削ってしまうケースが多いです。耐久性を最優先するなら、ポリ単張りの方が管理しやすいでしょう。
④ ガットをよく切る人
縦と横のどちらかが切れた時点で、張り替えが必要です。まだ使える方のガットも一緒に交換することになるので、もったいなく感じる人もいます。

変えるとしても、差は2ポンドくらいまでにしましょう。
縦横のテンションは変える?
おすすめは縦横同じテンション
縦横のテンションを変えると、ラケットに余計なストレスがかかるおそれがあるからです。
- 縦を強く張る → ラケットが縦につぶれるようなストレスがかかる
- 横を強く張る → ラケットが横にやせるようなストレスがかかる
テンションの差が大きいと、ラケットが変形するリスクが出てしまうんですね。
変えるなら、差は2ポンド程度まで
とはいえ、テンションを変えることにも理由はあります。
- 柔らかい方のガットを強めに張る:ナイロンはポリより柔らかいので、ナイロン側を少し強めにするのは理にかなっています(例:縦ポリ48ポンド × 横ナイロン50ポンド)
- 性能を強く出したい方のガットを強めに張る:縦ポリの特徴をもっと出したいなら、縦を強めに(例:縦ポリ50ポンド × 横ナイロン48ポンド)
ラケットの変形を避けるため、縦横の差は2ポンド程度に抑えて、いろいろ試してみるのがいいと思います。自分に合うテンションの決め方は、こちらの記事で解説しています。
-
-
【元ストリンガーが解説】テニスガットのテンションは高い・低いどっちがいい?メリット・デメリットと自分に合う決め方
こんにちは。ほそべーです。 「テンションって、高いほうがいいの?低いほうがいいの?」 ストリンガーをしていたころ、ガットの種類と同じくらいよく聞かれたのがテンションの質問です。 この記事では、元ストリ ...
プロ選手のハイブリッドのセッティング
プロ選手にも、ハイブリッドを使っている選手はたくさんいます。3人のセッティングを紹介します。
ダニール・メドベージェフ(ロシア):縦ナチュラル × 横ポリ
- 縦:ナチュラルガット 52ポンド
- 横:ポリエステル 50ポンド
2024年のBNPパリバ・オープンでのセッティングです。硬いポリを横に使っているので、横のテンションを2ポンド下げて、打球感の硬さを和らげる狙いだそうです。
なお、メドベージェフのラケットは18×19のストリングパターンで、後で紹介するトミー・ポールの16×19より糸の本数が多いです。本数が多いとガット密度が高くなり打球感が硬くなるので、テンションの数字だけで単純に比べることはできません。
ロジャー・フェデラー(スイス):縦ナチュラル × 横ポリ
- 縦:Wilson ナチュラルガット 59.5ポンド
- 横:LUXILON ALU POWER ROUGH 56.2ポンド
フェデラーのセッティングとして、よく知られている組み合わせです。柔らかく反発性の高いナチュラルガットを縦に、ポリを横に張り、ポリの横糸を低めのテンションにしています。
トミー・ポール(アメリカ):縦ポリ × 横ナチュラル
- 縦:ポリエステル 53ポンド
- 横:ナチュラルガット 55ポンド
メドベージェフとは逆の組み合わせです。ポリより柔らかく伸びやすいナチュラルガットを横に使い、ナチュラル側を2ポンド強く張っています。ガット面全体を引き締めて、コントロールを確保する狙いだそうです。
3人のセッティングから分かること
| 選手 | 縦 | 横 | 横のテンション |
|---|---|---|---|
| メドベージェフ | ナチュラル | ポリ | 縦より2ポンド低い |
| フェデラー | ナチュラル | ポリ | 縦より3.3ポンド低い |
| トミー・ポール | ポリ | ナチュラル | 縦より2ポンド高い |
3人とも、柔らかいガットの方を強く、硬いポリの方を弱く張っています。「横を強くする」「ポリを弱くする」という決まりがあるわけではなく、素材の違いを考えて打球感を調整しているわけです。
出典:
まとめ
- ハイブリッドは、縦と横で別のガットを張って「いいとこ取り」を狙う張り方
- 定番はポリ+ナイロンとポリ+ナチュラル
- 縦糸のガットの特徴が出やすい
- 組み合わせは「使いたいポリ+目的に合ったナイロン」で考えると選びやすい
- 肘が痛い人は、ハイブリッドよりマルチの単張りがおすすめ
- 縦横のテンションは同じがおすすめ。変えるなら差は2ポンド程度まで
- プロは柔らかいガットを強め、硬いポリを弱めに張る例が多い
ポリ単張りの硬さに悩んでいる方は、まずは縦ポリ × 横ナイロンから試してみてください。いつものポリが、ぐっと打ちやすくなるかもしれませんよ。